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法事

墓石への回向:故人に想いを届ける

回向とは、仏教の教えに基づく大切な行いで、自身の積み重ねた良い行いの力を、亡くなった人の幸せのために向けることを意味します。まるで、温かい光を故人に送るような慈しみの行為と言えるでしょう。葬儀や法要の場で、僧侶が読経する様子を思い浮かべてみてください。あの荘厳な読経の声は、参列者一人ひとりの善行を故人に届けるための架け橋となっています。読経を通して、皆の祈りが集まり、故人の安らかな眠りを願う大きな力となるのです。また、お墓の前で静かに手を合わせ、心の中で故人に語りかける時も、回向の一つです。静かな祈りを捧げるその姿は、故人を偲び、その冥福を願う心の表れと言えるでしょう。手を合わせることで、自身の思いと共に、良い行いの力が故人に届けられると信じられています。回向は、何も特別な儀式に限ったことではありません。日常生活の中で行う小さな親切や、困っている人を助ける行為など、どんな些細な良い行いでも、故人を思う心と共に行えば、回向となります。例えば、道に迷っている人に道を教えたり、落ちているゴミを拾ったりするのも、故人のために良い行いを積むことに繋がるのです。これらの小さな善行が積み重なることで、大きな力となり、故人の安らぎに繋がると考えられています。このように、回向とは、故人を偲び、その冥福を祈る様々な行為を指します。形にとらわれず、故人を思う真心こそが大切なのです。
法事

盂蘭盆会と墓参り

盂蘭盆会は、亡くなったご先祖様を敬い、感謝の思いを捧げる大切な行事です。その由来は、サンスクリット語で「逆さ吊り」という意味を持つウラバンナという言葉の音写である盂蘭盆経(うらぼんきょう)にあります。このお経には、お釈迦様の弟子の一人である目連尊者とその母親にまつわる物語が記されています。目連尊者は、神通力によって亡くなった母親を探し出したところ、なんと母親は餓鬼道と呼ばれる苦しみの世界で、逆さ吊りにされたような状態で苦しんでいました。その姿を見た目連尊者は深く悲しみ、どうすれば母親を救えるのかお釈迦様に教えを請いました。するとお釈迦様は、夏安居(げあんご)と呼ばれる修行期間を終えた僧侶たちに、様々な食べ物や飲み物、日用品などを供養するように目連尊者に指示しました。夏安居とは、僧侶たちが一定期間、寺院にこもって修行に励む期間のことです。目連尊者は、お釈迦様の教えに従い、僧侶たちへ真心込めて供養を行いました。すると、その功徳によって、母親は餓鬼道から救い出されたのです。この目連尊者とその母親の物語がもとになり、盂蘭盆会は先祖の霊を供養し、感謝の気持ちを表す大切な行事として定着しました。日本では、平安時代に宮中行事として始まり、その後、時代を経るにつれて庶民の間にも広まっていきました。現在では、地域によって7月13日から16日、または8月13日から16日の期間に、多くの家庭で先祖の霊をお迎えし、精霊棚に様々な供え物を用意して供養する行事として行われています。そして、再びあの世へと送り出す際には、感謝の思いを込めて送り火を焚きます。このようにして、盂蘭盆会は、私たちとご先祖様を繋ぐ大切な行事として、現代まで受け継がれているのです。
墓石

墓石に刻む、様々な浮き彫りの魅力

お墓のデザインを考える上で、石の表面に施される彫刻技法である浮き彫りは、故人の個性を表現する大切な要素です。様々な種類があり、それぞれに異なる雰囲気や奥行きを生み出します。まず、浅浮き彫りは、石の表面を浅く彫り込んで模様を付ける技法です。まるで絵を描くように繊細な表現が可能で、落ち着いた上品な印象を与えます。草花や文字などを控えめに表現したい場合に適しています。次に、高浮き彫りは、浅浮き彫りよりも深く彫り込むことで、より立体感を強調した技法です。力強く存在感のある表現が特徴で、故人の力強い生き様を表現するのに適しています。龍や鳳凰などのモチーフをダイナミックに表現する場合に用いられます。沈み彫りは、背景を掘り下げずにモチーフの部分だけを平面的に残す技法です。まるで版画のように、背景とモチーフのコントラストが美しく、すっきりとした印象を与えます。家紋や仏像などをシンプルに表現したい場合に適しています。最後に、凹み彫りは、モチーフの周囲を深く彫り込むことで、モチーフをより立体的に見せる技法です。光と影のコントラストが強調され、陰影の美しさが際立ちます。より立体的に文字や模様を表現したい場合に効果的です。これらの技法は、単独で用いられることもあれば、組み合わせて用いられることもあり、墓石のデザインに深みと奥行きを与えます。石材の種類や色合いとの組み合わせも考慮することで、より個性的で故人にふさわしいお墓を作り上げることができます。
法事

一周忌と墓石:故人を偲ぶ大切な儀式

一周忌とは、愛する人を亡くしてから一年目の命日のことを指します。この大切な日には、故人の霊を慰め、冥福を祈るための法要を営みます。また、親族や故人と親しかった人たちを招き、共に故人を偲び、生前の思い出を語り合う場を設けます。一年という月日は、深い悲しみを少しずつ癒してくれる時間でもあります。一周忌を迎えることで、私たちは故人のいない現実に改めて向き合い、喪失感を受け止め、少しずつ前を向いて生きていく力を得ることができるのです。故人の不在は確かに大きな悲しみですが、共に過ごした大切な時間は、私たちの心の中で生き続けています。一周忌は、その記憶を呼び覚まし、故人の存在の大きさを改めて感じる機会となります。楽しかった思い出、嬉しかった出来事、時には喧嘩をしたことなども、すべてがかけがえのない宝物です。一周忌の法要は、僧侶に読経をしてもらうことが一般的です。読経の後には、参列者一同で焼香を行い、故人に祈りを捧げます。法要が終わった後は、会食の席を設けることが多く、この席で故人の思い出話に花を咲かせ、故人の冥福を祈ると共に、参列者同士の親睦を深めます。一周忌は、故人の霊を慰めるだけでなく、遺族や故人と親しかった人たちの心を癒す大切な儀式です。集まった人たちは、共有の悲しみを分かち合い、互いに支え合うことができます。一周忌は、悲しみを乗り越え、前向きに生きていくための一つの区切りであり、故人の生きた証を未来へと繋いでいくための大切な節目と言えるでしょう。
葬式

墓石と引導:安らかな旅立ちのために

引導とは、葬儀において僧侶が故人の霊に向けて読み上げる弔いの言葉であり、迷いのない安らかな世界へと導くための大切な儀式です。この儀式は、故人が安心してあの世へと旅立てるように、また、残された人々が故人の冥福を祈るための大切な時間でもあります。僧侶は読経や法話を通して、故人に仏の教えを説きます。これは、まるで故人に語りかけるように、この世の執着を捨て、来世での安らかな境地へと導くための教えを伝えるものです。生前の行いを振り返り、悔い改める機会を与え、心静かにあの世へ旅立つための心の準備を促します。引導を渡すという言葉がありますが、元々は僧侶が悟りを開くための修行の一環として行われていました。師匠が弟子に厳しい言葉を投げかけ、迷いを断ち切り、悟りの境地へと導くための修行だったのです。時代が流れ、この儀式は一般の人々の葬儀にも取り入れられるようになりました。今では大切な故人を送る上で欠かせないものとなり、故人の魂が迷わずに成仏できるようにとの願いが込められています。引導の儀式は、故人だけでなく、残された家族や親族にとっても大きな意味を持ちます。故人の冥福を祈るだけでなく、死を受け入れ、悲しみを乗り越えるための心の支えとなるのです。僧侶の読経や法話を聞きながら、故人との思い出を振り返り、感謝の気持ちを表すことで、心穏やかに別れを告げることができます。引導は、単なる儀式ではなく、故人と残された人々をつなぐ大切な架け橋と言えるでしょう。故人はこの世の縁を断ち切り、新たな世界へと旅立ち、残された人々は故人の魂の安らぎを祈りながら、前を向いて生きていく力をもらえるのです。
墓石

墓石の位牌:その役割と歴史

位牌とは、亡くなった方の戒名や俗名、没年月日などを記した木の板のことです。これは、仏教において故人を偲び、供養するための大切な品です。毎日お仏壇に手を合わせる時、位牌はその中心的な存在となります。位牌を目にすることで、家族はその姿を思い起こし、共に過ごした日々を懐かしむことができます。故人の生きた証を目の前に感じることで、悲しみを乗り越え、前向きに生きていく力となるのです。また、位牌には故人の魂が宿るとも考えられており、あの世とこの世を繋ぐ架け橋のような役割も担っています。位牌には様々な種類があります。まず、葬儀直後に用いる白木位牌。四十九日法要後に作る黒塗位牌や塗り位牌。それぞれに意味があり、宗派や地域によって形や大きさ、 inscriptionの内容も異なります。四十九日法要を終えると、白木位牌から本位牌へと作り変えるのが一般的です。本位牌には、故人の戒名だけでなく、俗名や没年月日、行年(享年)なども記されます。白木のシンプルな位牌から、漆塗りや金粉で装飾された豪華なものまで、故人の人となりや家族の想いを込めて、様々な位牌が作られます。位牌を選ぶ際には、菩提寺の住職に相談すると良いでしょう。このように、位牌は単なる木の板ではありません。故人の魂が宿る場所であり、家族との繋がりを保ち、思い出を未来へ繋いでいくための、大切な拠り所なのです。位牌に手を合わせることで、私たちは故人の存在を身近に感じ、その教えや思い出を胸に、日々を力強く生きていくことができるのです。
墓石

墓石ができるまで:石割の工程

お墓を建てる際に欠かせないのが墓石ですが、その墓石の原料となる石はどのようにして切り出されているのでしょうか。今回は、山肌から大きな石を切り出す作業について詳しくご紹介します。まず最初に、山肌全体を見渡し、墓石に適した大きな岩の塊を探し出します。岩の種類や大きさ、色合いなど、様々な条件を考慮しながら慎重に選定していきます。熟練した石工は長年の経験と知識に基づき、良質な石材を見つけることができます。次に、選んだ岩にドリルで穴を開けていきます。この工程は、後の作業に大きく影響するため、非常に重要な作業です。石の内部には断層と呼ばれる割れ目が存在し、熟練の石工は、岩肌をよく観察し、断層の位置を見極めます。そして、その断層に沿って正確にドリルで穴を開けていきます。断層に沿って穴を開けることで、後から岩をきれいに割ることができるからです。もし断層の位置からずれて穴を開けてしまうと、岩が不規則に割れてしまい、墓石として使用できなくなる可能性があります。巨大な岩に穴を開ける作業は、大変な労力を要します。大型のドリルを巧みに操り、正確な位置に穴を開けるには、熟練の技術と豊富な経験が必要です。また、山肌という厳しい環境の中で行う作業であるため、安全にも細心の注意を払う必要があります。このようにして、山肌から巨大な岩を切り出す作業は、石工の技術と経験が結集された、まさに匠の技と言えるでしょう。そして、こうして切り出された石は、加工を経て墓石となり、故人の永遠の安らぎの場所の一部となるのです。
墓石

墓石の表情:荒目の魅力

お墓を建てる際、石材選びは大切な要素の一つです。数ある石材の中でも、独特の存在感を放つのが荒目石です。荒目石とは、その名の通り、石の表面に粗い目模様が見て取れる石材のことを指します。まるで布を織る際に糸の目が粗い織物を荒目と呼ぶように、墓石においても石の粒子が大きく、それらの間に隙間が多いものを荒目と表現します。この荒目石の最大の特徴は、その力強い見た目にあります。緻密で滑らかな表面を持つ石材とは異なり、荒目石は粗く凹凸のある表面を持ちます。この粗さが、見る人に力強さや重厚感、そしてどこか懐かしいような温かみを感じさせます。まるで長い年月を経て自然の風雨に耐えてきたかのような、大地の力強さをそのまま形にしたような印象を与えます。また、荒目石の粗い表面は、光を複雑に反射します。そのため、見る角度や光の当たり具合によって様々な表情を見せるのも魅力の一つです。朝日に照らされて輝く様は荘厳であり、夕日に染まる様はどこか物悲しく、そして雨に濡れてしっとりとした様は落ち着いた雰囲気を醸し出します。このように、時間や天候によって変化する表情は、訪れる人の心に深く刻まれることでしょう。自然の力強さを感じさせる荒目石は、故人の個性を表現するのにふさわしい素材と言えるでしょう。力強く生きた故人を偲び、その人生を讃える monument として、荒目石は静かにその存在を示し続けます。
墓石

墓石に用いる安山岩

安山岩は、火山の噴火によってできる岩石です。地球の奥深くにあるマグマが、火山の噴火によって地表に流れ出し、急激に冷やされることで固まり、安山岩となります。そのため、火山が多い地域でよく見られます。安山岩の主な成分は二酸化ケイ素です。その他にも、様々な鉱物が含まれており、それらの種類や割合によって、岩石の色が変わります。例えば、灰色、黒色、赤褐色など、様々な色の安山岩が存在します。含まれる鉱物の違いによって、石の見た目や性質も微妙に変化します。安山岩は、緻密で硬いという特徴があります。これは、マグマが急に冷えて固まる際に、石の組織が細かく詰まった状態になるためです。この硬さのおかげで、安山岩は様々な用途に利用されています。建物の土台や壁などの建材として使われることが多く、耐久性が求められる構造物に適しています。また、細かな加工もしやすいため、墓石や石碑などにもよく使われています。古くから、安山岩は人間の生活に欠かせない石材として、様々な形で利用されてきました。安山岩は、火山の恵みによって生まれた岩石です。その硬さや加工のしやすさから、私たちの生活の様々な場面で活躍しています。身近な場所で使われている安山岩を探してみるのも面白いかもしれません。
葬式準備

病院から自宅へ:故人の搬送

人はいつか必ずこの世を去ります。そして、その最期の時を自宅で迎えるとは限りません。病院で息を引き取る場合も少なくありません。病院で亡くなった際は、速やかにご遺体を病院から移動させる必要があります。これは病院側の規則であると同時に、衛生管理の面からも大変重要です。ご遺体を適切な場所へ搬送することは、葬儀の準備の第一歩となります。搬送というと、トラックなどで長距離移動させる様子を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、病院から自宅へ、あるいは葬儀場への移動も搬送に含まれます。搬送が必要となるのは、病院だけでなく、介護施設や公共の場など、自宅以外の場所で亡くなった場合全てです。自宅以外で亡くなった時は、ご遺体を安置できる場所へ一刻も早く移動させる必要があり、この移動こそが搬送なのです。搬送には、故人の尊厳を守るという意味合いもあります。病院で亡くなった場合、ご遺体は霊安室に一時的に安置されますが、長期間安置しておくことはできません。また、病院によっては霊安室がない場合もあります。そのため、葬儀の日程や場所が決まるまで、ご遺体を安置できる場所を確保するために搬送が必要となるのです。自宅に安置する場合は、自宅まで搬送し、葬儀場を利用する場合は、葬儀場まで搬送することになります。搬送には専門の業者に依頼するのが一般的です。搬送業者は、故人の尊厳を守り、適切な方法で搬送を行います。また、搬送に際して必要な手続きなども代行してくれるため、遺族の負担を軽減できます。故人の最期の時を偲び、葬儀を滞りなく行うためにも、適切な搬送手続きは欠かせません。搬送は、故人を見送るための大切な第一歩と言えるでしょう。
法事

托鉢と葬儀の関係:僧侶の器

托鉢とは、僧侶が修行の一環として行う、信者の方々から食べ物や日用品をいただく大切な行いです。修行僧は、自ら働くことをせず、生活のすべてを人々に委ね、最低限の物資で日々を過ごします。そうすることで、物への執着や欲望を捨て去り、仏の道を学ぶことに心を集中できるのです。托鉢は、ただ食べ物をいただく行為ではありません。僧侶と信者の方々が心を通わせる、大切な交流の場でもあるのです。信者の方々は、食べ物を捧げることで、善い行いを積み重ねていきます。僧侶は、いただいた物に感謝の心を抱き、ありがたく頂戴します。このようにして、僧侶と信者はお互いに仏の教えを深めていくのです。托鉢によって、僧侶は人々の暮らしを肌で感じ、社会との繋がりを保つことができます。日々の生活の中で人々と接することで、社会で何が起きているのか、人々がどんなことで悩んでいるのかを知ることができます。そして、人々の心に寄り添い、より良い仏教の教えを広めるためのヒントを見つけることができるのです。托鉢は、限られた生活の中で、感謝の気持ちや慈悲の心を育む修行でもあります。托鉢を通して、人々の温かさや支えの大切さを実感し、仏教の教えをより深く理解していくのです。また、托鉢は僧侶が修行に専念できるよう、地域社会が支えるという精神も表しています。人々は托鉢を通して仏教を身近に感じ、僧侶の修行を支える喜びを分かち合います。このように托鉢は、仏教の精神を体現する大切な修行であり、僧侶と信者、そして地域社会全体にとって、深い意味を持つ尊い行為と言えるでしょう。
葬式

箸渡し:故人との最後の別れ

火葬後の収骨の際に箸を用いる特別な儀式、「箸渡し」。この儀式は、日本の古くからの葬送儀礼の中でも特に大切な意味合いを持っています。あの世へと旅立つ故人の魂を送り出す、橋渡しとしての役割を担っているのです。「箸」は「橋」と同じ読みであることから、あの世へ続く橋の象徴とされ、故人が無事にあの世へ渡れるようにとの願いが込められています。二本の箸で遺骨を挟むという行為は、深い意味を持っています。これは、故人と残された家族との最後の繋がりを表現していると考えられています。共に過ごした日々を思い返し、感謝の気持ちを込めて、静かに遺骨を拾い上げる。それは、言葉にならない深い愛情の表れです。また、箸渡しは複数人で一緒に行います。これは、故人の霊をみんなで支え、一緒に送るという意味が込められています。箸渡しは、単なる遺骨を骨壺に収める作業ではありません。故人とこの世で最後のお別れを告げる神聖な儀式です。参列者も深い悲しみのうちに、故人の霊が安らかにあの世へ旅立てるよう、静かに祈りを捧げます。地域によっては、箸を骨壺に入れたままにする所と、箸を骨壺に入れない所があります。「箸渡し」という儀式には、日本人の死生観が深く関わっています。故人の冥福を祈り、残された人々が悲しみを乗り越えて生きていくための、大切な儀式なのです。この儀式を通して、私たちは命の尊さ、そして家族や周りの人々の大切さを改めて心に刻むのです。
墓地

廃墓について:お墓の撤去と供養

廃墓とは、墓石や遺骨を取り除き、お墓を更地に戻すことを指します。墓じまいとも呼ばれるこの手続きは、近年、少子高齢化や核家族化、都市部への人口集中といった社会の変化に伴い、増加傾向にあります。お墓は、寺院や霊園などから土地を借りて建てるのが一般的です。そのため、廃墓する際には、借りていた土地を更地にして返還する必要があります。この更地に戻す作業こそが、廃墓における大きな特徴です。単に墓石を撤去するだけではなく、遺骨を取り出し、適切な方法で供養しなければなりません。また、更地に戻すための費用も必要となるため、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。廃墓の理由として最も多いのは、後継者不足です。子どもがいない、あるいはいても遠方に住んでおり、お墓の管理が難しいといった事情を抱える人が増えています。また、経済的な負担も無視できません。お墓の維持管理には、墓石の清掃や修繕、管理費の支払いなど、継続的な費用がかかります。こうした負担を軽減するために、廃墓を選択する人も少なくありません。廃墓は、先祖代々のお墓を閉じるという重大な決断です。そのため、親族間でよく話し合い、合意形成を図ることが重要です。また、廃墓の手続きは、寺院や霊園、石材店など、様々な関係者とのやり取りが必要となります。手続きの内容や費用、注意点などを事前に確認し、スムーズな廃墓を目指しましょう。廃墓は単にお墓を撤去するだけでなく、故人の供養をどのように継続していくかを考える機会でもあります。永代供養や散骨、手元供養など、様々な選択肢を検討し、自分たちに合った供養の形を見つけることが大切です。
墓地

バリアフリー墓地:誰もが安心してお参りできる場所

車いすの方や、ご年配の方、小さなお子さんを連れた方など、どなたでも安心して墓参ができるように整備された墓地を『段差のない墓地』といいます。これは『平坦墓地』とも呼ばれ、近年、高齢化が進むにつれて需要が高まっている設計思想です。従来の墓地では、通路に段差があったり、足場が悪かったりする場合が多く、お参りするだけでも大変な苦労を伴うことがありました。車いすをご利用の方はもちろん、杖を使う方や足腰の弱い方にとっても、お墓までの道のりは負担が大きく、安全面でも不安がありました。小さなお子さんがいる場合は、段差で転んだり、砂利道でつまずいたりする危険性もあり、常に注意を払う必要がありました。段差のない墓地では、駐車場から墓地内、そして個々のお墓まで、できる限り段差をなくすよう設計されています。段差の代わりに、緩やかなスロープが設置されている場合もあります。車いすの方でもスムーズに移動でき、杖を使う方や足腰の弱い方でも負担なくお参りすることができます。また、小さなお子さんが転倒する危険性も少なく、家族みんなで安心して故人を偲ぶことができます。墓地内は舗装されていることが多く、雨の日でもぬかるみに足を取られる心配がありません。水はけも良く設計されているため、お墓の周囲が水たまりになることも防ぎます。さらに、休憩できるベンチや屋根付きの待合スペースなどが設置されている墓地もあり、快適にお参りできるよう様々な工夫が凝らされています。このように、段差のない墓地は、誰もが安全に、そして快適に故人に想いを馳せることができる場所として、ますます重要性を増しています。
墓石

炎が生む石の風合い:バーナー加工

お墓は、亡くなった方が永遠に眠る大切な場所であり、その中心となる墓石は、故人の象徴とも言えるでしょう。素材や形、加工方法など、様々な要素が組み合わさり、一つとして同じものがない、個性豊かな墓石が生まれます。その中でも、炎を使って石の表情を変える「焼き入れ加工」は、独特の風合いを生み出す特別な技法です。焼き入れ加工は、バーナーと呼ばれる道具で石の表面を焼き、金属の成分を蒸発させることで、研磨仕上げとは異なる質感を生み出します。まるで長い年月をかけて風雨にさらされたかのような、柔らかな凹凸と温かみのある色合いが特徴です。自然の力によって形作られたような、優しい雰囲気は、故人の思い出を包み込み、訪れる人の心を穏やかに癒してくれるでしょう。この焼き入れ加工は、単なる表面的な加工ではありません。石の内部にも熱が伝わることで、石全体の強度を高める効果も期待できます。また、炎の当たり具合や時間によって、色の濃淡や模様の変化を付けることも可能です。職人の熟練した技と炎の力が織りなす芸術的な効果は、墓石に唯一無二の魅力を添えます。古くから受け継がれてきた石材加工の技術と、自然の力である炎が融合した焼き入れ加工は、故人の個性を表現し、その記憶を未来へと繋ぐ、特別な技法と言えるでしょう。時代を超えて愛される、温もりと風格を兼ね備えた墓石は、きっと、訪れる人々の心に深い安らぎを与えてくれるはずです。
法事

故人を偲ぶ初盆の基礎知識

初盆とは、人が亡くなってから初めて迎えるお盆のことです。一般的に、四十九日の忌明け後、初めて巡ってくるお盆を指します。あの世に旅立った方が初めて我が家に戻ってくる大切な機会と考えられており、特に手厚く供養を行います。初盆の法要は、通常のお盆とは少し異なり、親族だけでなく故人と親しかった友人や知人、仕事関係の方々など、より多くの人々を招いて営まれることが多いです。僧侶に読経をお願いし、故人の霊を慰めます。読経の後には会食の席を設け、参列者と故人の思い出を語り合い、共に故人を偲びます。初盆の行事は地域によって様々です。たとえば、精霊棚と呼ばれる棚を設け、故人の好物や季節の果物、野菜などを供えたり、盆提灯や灯篭を飾り、故人の霊が迷わずに戻って来られるよう目印とする風習があります。また、地域によっては、精霊船や灯篭を川や海に流して故人の霊を送り出す「精霊流し」の行事も行われます。これらの風習は、故人の霊を温かく迎え入れ、そして無事にあの世へと送り出すための大切な儀式として、古くから大切に受け継がれてきました。初盆は、単なる法要の儀式ではなく、故人の冥福を心から祈り、生前のご恩に感謝の気持ちを伝える大切な機会です。故人の在りし日の姿を思い出し、共に過ごした時間を懐かしみながら、故人の安らかな旅立ちを祈念する、大切なひとときと言えるでしょう。
墓石

斜墓誌:現代的なお墓のかたち

斜墓誌とは、近年増えている横長の洋型墓石でよく見られる墓誌のことです。お墓に納められた故人の名前や戒名、没年月日などを記す墓誌ですが、従来の墓誌は板状で、墓石の左右どちらかに独立して建てられていました。しかし、斜墓誌はそれとは異なり、ご遺骨を納めるカロートの手前に緩やかな斜面を作り、その斜面自体を墓誌として使うのが特徴です。この斜面になった墓誌は、文字を刻むスペースを十分に確保しながら、お墓全体と一体化したデザインとなるため、すっきりとした印象を与えます。まるで墓石の一部であるかのように自然に溶け込むため、墓石と墓誌が別々に設置されている従来の形式に比べて、統一感のある美しい仕上がりになります。また、この一体型の構造は、限られた敷地を有効に使えるという利点もあります。都市部では墓地の面積が狭くなりがちですが、斜墓誌であれば墓誌を別に設置するスペースを必要としないため、コンパクトなお墓でも十分な情報を記すことができます。そのため、近年、都市部を中心に人気が高まっており、限られたスペースでもゆとりある墓所を設けたいという方々に選ばれています。さらに、斜墓誌は、現代的な雰囲気も魅力の一つです。従来の縦型の墓石と比べて、横長の洋型墓石と組み合わせることで、より洗練された印象を与えます。そのため、近年増加している洋型墓石の需要と相まって、若い世代からも支持を集めています。和型墓石の荘厳な雰囲気とはまた異なる、現代的な美しさを求める方にもおすすめです。