樒:葬儀と法事における役割と注意点
樒(しきみ)は、マツブサ科に属する常緑の小さな木で、一年を通して緑の葉を保ちます。日本では古くから仏事と深く結びつき、お墓や仏壇にお供えする花として親しまれてきました。特に西日本で多く用いられ、地域によっては「しきび」と呼ばれることもあります。樒の葉は濃い緑色で光沢があり、春になるとクリーム色の小さな花を咲かせます。その上品で独特の香りは、厳かな雰囲気を作り出し、故人を偲ぶ気持ちを高めてくれます。お線香の原料としても使われており、その香りは私たちを心静かな気持ちにさせてくれます。樒が仏事に用いられるようになった理由はいくつか考えられます。一つは、その常緑性です。一年中緑の葉を茂らせる姿は、変わらぬ故人への想いを表していると考えられています。また、樒の全体に毒性があるため、害虫や動物から墓を守る役割もあったと言われています。土葬が主流だった時代には、野生動物が墓を荒らすのを防ぐために、樒が植えられたという説もあります。さらに、樒の香りには防腐効果もあるとされ、これも仏事に用いられるようになった理由の一つと考えられます。また、樒の枝葉を仏前に供えることで、故人の霊を慰め、安らかに眠れるようにという願いが込められています。このように、樒は単なる植物ではなく、深い意味を持つ大切なものとして、日本の仏事文化に欠かせない存在となっています。その香りや緑の葉は、私たちに故人の思い出を呼び起こし、静かに故人を偲ぶ時間を与えてくれるのです。