墓石に新たな息吹を吹き込むサンドブラスト
お墓に様々な模様や文字を刻む技術は、時代と共に大きく進歩してきました。かつては、熟練の職人が鏨と槌という道具を用い、一つ一つ心を込めて丁寧に手彫りする技法が主流でした。石の硬さや性質を見極めながら、鏨を槌で叩き、少しずつ石を削り出して模様を浮かび上がらせる、大変な時間と労力を要する作業でした。文字の一つ一つ、曲線の一つ一つに職人の技と魂が込められており、まさに芸術作品と呼ぶにふさわしいものでした。しかし近年では、サンドブラストと呼ばれる新しい技法が広く用いられるようになりました。サンドブラストとは、圧縮した空気を研磨剤と共に墓石に吹き付けることで、表面を削り模様を刻む技術です。研磨剤の種類や空気圧を調整することで、線の太さや深さを自在に操ることができ、イラストや写真のように細かい模様など、複雑な彫刻も容易に施すことが可能となりました。従来の手彫りでは表現が難しかった繊細なデザインも、サンドブラストによって実現可能となり、故人の個性や好きだったもの、生前の思い出などをより豊かに表現した墓石を制作することができるようになりました。例えば、故人が好きだった花や風景、趣味の道具などを細かく再現したり、故人の似顔絵を刻むことも可能です。また、サンドブラストは手彫りに比べて作業時間が短縮されるため、比較的短い期間で墓石を完成させることができます。これは、お墓を早く建てたいという遺族の気持ちに応える上で大きなメリットと言えるでしょう。このように、サンドブラストは、伝統的な手彫りの技術とは異なる新しい表現方法として、墓石のデザインの可能性を大きく広げ、現代のニーズに応える技術として定着しています。