墓石の「よど切り」:格式高い印象を与える技法
よど切りとは、お墓の石の表面に施される加工方法の一つで、江戸切りとも呼ばれています。石の四辺を内側に削り、直角に切り取ることで段差を作る技法です。この段差があることで、平面的な石の表面に奥行きと立体感が生まれ、重厚で格式高い印象を与えます。一見すると単純な加工に見えますが、実際には熟練した石工の高度な技術と手間が必要とされます。まず、石の四辺に墨付けを行い、切る場所を正確に決めます。その後、専用の道具を用いて丁寧に石を削り、寸分の狂いもなく直角に切り込んでいきます。この作業は大変な集中力を要し、少しでも手が滑れば石に傷が付いてしまい、やり直しがききません。そのため、よど切りを美しく仕上げるには、長年の経験と鍛錬によって培われた熟練の技が必要不可欠です。高度な技術と手間がかかるため、よど切りが施されたお墓は、一般的なお墓よりも価格が高くなる傾向があります。このよど切りという技法は、特に棹石(お墓の本体部分)の表面に施されることが多く、棹石の存在感をより際立たせる効果があります。棹石に施されたよど切りは、お墓全体をより格調高く荘厳なものへと昇華させ、故人の威厳を偲ばせるのに一役買っています。また、雨水の流れを良くする効果もあり、お墓の劣化を防ぐという実用的な側面も持っています。近年では、洋型墓石にもよど切りが施されるようになり、伝統的な和型墓石だけでなく、現代的なデザインのお墓にも取り入れられています。このように、よど切りは、時代を超えて愛される、お墓の加工技術と言えるでしょう。