円椅

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法事

僧侶の座、曲録:その歴史と意味

曲録とは、仏教の儀式で僧侶が使う特別な椅子のことです。お寺の本堂や葬儀場などでよく見かけることができます。その姿は、私たちが普段使う椅子とは大きく異なり、独特の形をしています。まず目を引くのは、後ろに反り返った背もたれです。まるで体を優しく包み込むような曲線を描いており、座る人に安心感を与えます。この背もたれは、長時間の読経や座禅でも疲れにくいように工夫されていると言われています。そして、曲録の足の部分にも特徴があります。折りたたみ式になっており、これは床几と呼ばれています。使わない時はコンパクトに畳むことができ、持ち運びにも便利です。この床几という形も、曲録の独特な雰囲気を醸し出すのに一役買っています。全体を見ると、曲録は丸みを帯びた形をしています。そのため、円椅とも呼ばれています。この丸い形には、円満や宇宙との調和といった意味が込められていると言われています。僧侶がこの曲録に座ることで、その場は神聖な空間に変わり、儀式がより厳かさを増すのです。曲録は、単なる椅子ではなく、仏教の教えや精神性を体現するもののひとつと言えるでしょう。その独特な形状は、見る人に安らぎと静けさを感じさせ、儀式にふさわしい風格を与えています。