東大寺

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法事

華厳宗:大仏と深い教え

華厳宗は、奈良時代に海を渡って日本に伝えられた仏教の一派です。その教えの中心となるのは、華厳経と呼ばれるお経です。このお経は、もともとは古代インドの言葉で書かれており、お釈迦様が悟りを開いた直後に説かれたと伝えられています。内容は非常に難しく、奥深い哲学的な考え方が込められています。華厳宗は、この華厳経を根本とする教えを整理し、体系だったものとしました。奈良の東大寺にある大きな仏像(盧舎那仏)も、この華厳宗の教えに基づいて作られたものです。華厳宗の始まりは、中国の杜順という高僧にあるとされています。その後、智儼、法蔵といった高僧たちがその教えをさらに深めて発展させていきました。日本には、今から千三百年前ほど前に、中国から来た審祥という僧侶によって伝えられました。華厳宗は、日本の仏教の世界に大きな影響を与え、東大寺を中心として多くの人々の信仰を集めました。また、華厳宗の考え方は、日本の文化や芸術にも大きな影響を与えています。例えば、東大寺の正倉院という建物に大切に保管されている品々の中には、華厳宗の影響を受けた美しい工芸品がたくさん見られます。さらに、日本の伝統芸能である能や狂言といった舞台芸術にも、華厳の教えが影響を与えていると言われています。華厳宗は仏像や絵画、建築、芸能など、様々な分野を通して日本の文化を彩ってきました。それは、華厳経の世界観が、人々の心に深く響き、様々な形で表現されてきたからと言えるでしょう。
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お水取り:東大寺二月堂の秘儀

お水取りは、奈良の東大寺二月堂で毎年3月1日から14日にかけて執り行われる大切な仏教行事です。正式には修二会と呼ばれ、二月堂のご本尊である十一面観音様に対し、過去の行いを反省し、懺悔するとともに、国の平和や豊作を願う厳かな儀式です。奈良時代より1200年以上もの歴史を持ち、一度も途切れることなく今日まで続けられてきた伝統行事です。その神秘的な雰囲気と厳かな儀式は、古くから多くの人々を魅了し続けています。お水取りの期間中は、選ばれた僧侶である練行衆と呼ばれる人々が、二月堂にこもって厳しい修行を行います。彼らは、冷水をかぶり、睡眠時間を最小限に抑え、ひたすら祈りを捧げ続けるのです。この厳しい修行は、人々の罪を代わりに背負い、幸福を祈るという深い慈悲の精神に基づいています。中でも、12日の夜に行われる「おたいまつ」は、この行事のクライマックスと言えるでしょう。二月堂の舞台から大きな松明が突き出され、豪快に火の粉をまき散らす様子は、まさに壮観です。この火の粉には、無病延命のご利益があるとされ、多くの人々がこの光景を見ようと集まります。また、この「おたいまつ」は、冬の終わりと春の訪れを告げる風物詩としても広く知られており、奈良の春の風物詩として、多くの人々に親しまれています。このように、お水取りは、単なる伝統行事ではなく、人々の祈り、願い、そして希望が込められた、日本の精神文化を象徴する大切な行事と言えるでしょう。