死装束

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死装束:故人の旅立ちを支える attire

死装束とは、亡くなった方があの世へ旅立つ時に着る衣装のことです。遠い昔より、あの世への道のりが安全であるようにと願い、亡くなった方の魂を慰める大切な儀式として行われてきました。古くは、死は穢れと結びつけられていました。そのため、現世の汚れを洗い流すという意味で、白装束を身に纏うようになったと言われています。白い経帷子に三角頭巾、菅笠、草鞋といった姿は、まさに旅立ちの姿を象徴しています。経帷子は、仏教の教えである経文が書かれた布で作られた着物です。文字が書かれている面を表にして着用することで、功徳を積むことができると信じられてきました。また、頭にかぶる三角頭巾は、額の汗を拭うためだけでなく、死出の旅路の険しさから故人の頭を護る意味もあるとされています。菅笠は日差しや雨風をしのぐためのものです。あの世への旅路は長く険しいと考えられていたため、これらを身に着けることで故人の安全を願ったのです。足元には草鞋を履かせます。これはあの世へ旅立つ故人の足取りを軽くするため、そして道中の安全を祈る意味が込められています。現代では、葬儀の簡素化が進み、白い着物や経帷子を身に付けずにスーツなどの普段着で送ることも増えました。しかし、死装束には故人の冥福を祈り、あの世への旅立ちを支えるという深い意味が込められています。その意味を知ることで、葬儀への理解がより深まり、故人を見送る気持ちもより一層強まるのではないでしょうか。
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旅立ちの装い:仏衣

人はこの世を去るとき、白い衣を身にまといます。これは仏衣と呼ばれ、白装束ともいいます。古くから、死出の旅への大切な準備として受け継がれてきました。この白い色には、深い意味が込められています。まず、白は清浄を表す色です。この世の汚れを清め、清らかな姿で旅立つことを意味します。そして、白は新たな始まり、希望の象徴でもあります。あの世での新たな生への希望、再生への願いが込められているのです。仏教では、死後の世界を浄土といいます。仏衣は、故人が迷うことなく無事に浄土へたどり着けるようにとの願いを込めた、巡礼者の衣装のようなものです。あの世への旅路を安全に進むための、いわばお守りのような役割を果たしているのです。しかし、すべての仏教の教えが同じように仏衣を捉えているわけではありません。浄土真宗では、人は亡くなった瞬間に仏になると考えられています。そのため、浄土真宗では必ずしも仏衣を必要とはしません。白い衣を着なくても、すぐに仏になれるからです。このように、仏教の中でも宗派によって考え方が異なり、仏衣に対する意味合いも少しずつ違っているのです。だからこそ、仏衣には奥深い魅力があると言えるでしょう。白い衣は、故人の旅立ちへの想いと、残された人々の祈りを静かに物語っているのです。
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神式の葬儀における神衣

神衣とは、神道の葬儀で故人に着せる白い衣装のことを指します。神道では、死は穢れ(けがれ)と捉えられており、白い衣には、故人を清める意味合いが込められています。同時に、神様の世界へ旅立つ故人のための晴れ着としての意味も持ちます。神衣は、神職の衣装と似た形式で、男女で異なった形をしています。男性の場合は、平安時代の貴族の普段着であった狩衣(かりぎぬ)を模した装束を着用します。狩衣は、襟が大きく開いた上着で、動きやすいように袖が広く作られています。色は白が基本ですが、薄い水色や浅葱色(あさぎいろ)などの場合もあります。故人はこの狩衣に烏帽子(えぼし)を被り、笏(しゃく)を持ちます。烏帽子は、かつて位の高い男性が着用した、高く角張った黒い帽子です。笏は、細長い板で、神聖な儀式などで用いられました。これらの装束を身につけ、故人は神様の世界へと旅立ちます。一方、女性の場合は、高貴な女性が着用していた小袿(こうちぎ)を模した白い衣装を着用します。小袿とは、平安時代の貴族の女性が着ていた袿の一種で、幾重にも重ねて優雅さを演出しました。神衣として用いる小袿は、白一色で仕立てられ、故人の清らかさを表します。女性は小袿に、扇を持ちます。扇は、古くから魔除けの意味を持つとされ、故人の霊魂を守護する意味が込められています。このように、男性には狩衣と烏帽子、笏、女性には小袿と扇というように、それぞれ異なった装束が用意されています。これらの装束は、故人の霊魂を神聖なものへと変容させ、神様の世界へ送り出すという大切な役割を担っているのです。現代では、これらの神衣一式は、葬儀社が用意するのが一般的となっています。
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納棺の儀:故人との最後の別れ

納棺とは、亡くなった方を棺に納める儀式のことです。故人にとってこの世での最後の身支度を整え、安らかな旅立ちへと送り出す大切な儀式と言えるでしょう。単に亡骸を棺に納めるだけでなく、深い意味を持つ日本の伝統文化の一つです。古くから大切にされてきたこの儀式は、葬儀の中でも特に重要なものとされています。納棺の際には、まず故人の体を清めます。湯灌と呼ばれるこの儀式では、温かいお湯で体を洗い清め、身だしなみを整えます。まるで故人が生前のように、髪を整え、髭を剃り、化粧を施すこともあります。これは、故人に生前と変わらぬ姿で旅立ってほしいという遺族の願いが込められた行為です。清めが終わると、故人に死装束を着せ、棺に納めます。故人が愛用していた着物や、思い出の品などを棺に納めることもあります。これは、故人の魂が安らかに眠れるようにとの祈りが込められています。また、故人の霊が迷わずあの世へ行けるようにと、六文銭や守り刀などの副葬品を納める地域もあります。納棺は、遺族にとって故人と最後の別れを告げる時でもあります。深い悲しみの中にも、故人との思い出を振り返り、感謝の気持ちを表す大切な時間となります。静かに故人の冥福を祈り、安らかな旅立ちを願う、厳粛で神聖な儀式と言えるでしょう。納棺の時間は、地域や宗教によって異なりますが、いずれも故人を敬い、弔う気持ちで行われます。
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故人に寄り添う経帷子:その意味と役割

経帷子(きょうかたびら)とは、亡くなった方に着せる白い衣装のことです。あの世への旅立ちに際し、故人が穏やかに過ごせるようにとの願いを込めて、旅支度の一つとして用意されます。この白い衣装には、般若心経をはじめとする様々な経文が書かれています。これらの経文は、故人の迷いのない旅路と、成仏を願う気持ちが込められています。故人を包み込むように、この経帷子を着用させます。経帷子は「寿衣(じゅい)」とも呼ばれ、故人の長寿を願う意味も含まれています。かつては、故人が生前に愛用していた着物を寿衣として用いることもありました。しかし、現代では木綿の白い生地に経文が印刷されたものが一般的となっています。経帷子は、故人の体を守るためだけの単なる衣服ではありません。残された家族が故人の冥福を心から祈る気持ちと、安らかな旅立ちを願う愛情が深く込められています。それは、故人の霊魂を敬い、弔う大切な儀式の中で重要な役割を担う、故人と家族をつなぐ大切な品です。また、経帷子を着せることで、現世との別れを告げ、あの世へ旅立つ故人の魂を優しく見送る意味も込められています。経帷子の種類は様々で、宗派によって異なる場合もあります。また、故人の身体のサイズに合わせて選ぶことも大切です。葬儀社などに相談することで、適切な経帷子を選ぶことができます。