相続手続き

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相続・税金

相続財産管理人の役割:故人の遺産を適切に管理する

人が亡くなり、この世を去った後、その方の所有していた財産は通常、遺言書があればその内容に従い、なければ民法で定められた相続人に引き継がれます。しかし、相続する人が誰もいない場合や、相続人が全員相続を放棄した場合、残された財産はどうなるのでしょうか。このような時に必要となるのが、相続財産管理人です。相続財産管理人は、家庭裁判所によって選任される、いわば故人の財産の代理人のような存在です。相続人がいない、あるいは相続を放棄したために誰も財産を引き継がない場合、放置された財産は適切に管理されず、建物や土地であれば劣化し、預貯金であれば利子が生かされません。また、故人の債権や債務についても、処理する人がいなければ、思わぬ紛争に発展する可能性も出てきます。相続財産管理人は、このような事態を防ぎ、故人の財産を適切に保全・管理する重要な役割を担っています。具体的には、相続財産管理人は、故人の財産の調査、換価、債権の回収、債務の弁済などを行います。そして、すべての財産を整理した後は、国に財産を引き渡す手続きを行います。つまり、相続財産管理人は、誰にも相続されない財産を最終的に国庫に帰属させるという、いわば橋渡しのような役割を果たしていると言えるでしょう。相続財産管理人の存在は、故人の財産が適切に処理されることを保証し、社会秩序を守る上でも重要な役割を果たしているのです。
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いざという時の備え:危急時遺言

人生には、思いもよらない出来事が起こることがあります。例えば、突然の病気や事故など、明日何が起こるか誰にも分かりません。そのような不測の事態に備えて、自分の意思を明確に示し、大切な家族を守ることができるのが遺言です。通常、遺言を作成するには、一定のルールに従った手続きが必要です。しかし、一刻を争うような状況では、時間をかけて正式な遺言を作成することが難しい場合も少なくありません。そこで、法律では、緊急性の高い状況において特別な方法で遺言を残せる「一般危急時遺言」という制度が用意されています。この制度は、まさに命の危険が迫っているなど、極めて緊急性の高い状況下で利用できます。例えば、重篤な病気や大事故に遭い、意識が朦朧とする中でも、証人3人がいれば、口頭で遺言の内容を伝えることで、有効な遺言として認められます。筆記用具があれば、自分で内容を書いて署名し、証人3人が署名捺印すればさらに確実です。ただし、病状が回復し、通常の遺言を作成できるようになった場合は、一般危急時遺言は無効となります。この制度は、予期せぬ事態に陥ったとしても、自分の想いを家族に伝え、財産の分配方法などを決めておくことで、家族間のトラブルを防ぎ、大切な家族を守ることができます。人生の最期を迎えるその瞬間まで、自分の意思を尊重してもらうための大切な手段として、この「一般危急時遺言」について知っておくことは、いざという時の備えとして非常に重要と言えるでしょう。