期限付き墓地という選択
かつて、昭和の時代までは、お墓と聞いて思い浮かべるのは、決まって灰色や黒色の四角い石が、整然と並んだ風景でした。お墓の形も大きさもほぼ同じで、墓石に刻まれた文字も、家名と故人の名前、没年月日が一般的でした。お墓は家制度の象徴であり、先祖代々を受け継ぎ、子孫に繋いでいく大切な場所という認識が強くありました。しかし、時代は変わり、近年のお墓は多様化が進んでいます。例えば、ヨーロッパの教会で見かけるような壁に沿って設置された壁墓地や、故人の趣味や好きだったものをモチーフにした個性的なデザインのお墓も見られるようになりました。従来の和型墓石だけでなく、洋型墓石やデザイン墓石など、選択肢も広がっています。素材も石だけでなく、ガラスや金属など様々なものが使われるようになり、色も形も自由な発想で故人を偲ぶ空間が作られています。お墓参りも変化しています。以前は、お盆の時期にお供え物といえば、故人の霊を慰めるための菊の花が主流でした。しかし、今では菊だけでなく、色とりどりのガーベラやチューリップ、故人が好きだった花を束ねた花束を供える方も増えています。お墓に線香をあげ、手を合わせるだけでなく、故人との思い出を語り合ったり、好きだった音楽を流したりと、それぞれのスタイルで故人を偲ぶ姿が見られます。これは、核家族化や少子高齢化といった社会の変化とともに、お墓に対する考え方も多様化し、従来の形式にとらわれず、それぞれの思いで故人を弔うという風潮に変化していることを示していると言えるでしょう。