葬儀道具

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葬式

葬儀を支える輿:その役割と歴史

葬儀において、故人をあの世へと送り届けるための重要な役割を担うのが輿です。棺を納め、葬列の先頭に立って墓地まで運びます。古くから、故人の魂をあの世へと送り届ける神聖な乗り物として大切に扱われてきました。かつての土葬が主流であった時代には、近親者や地域の人々が交代で輿を担ぎ、故人の重みを共に感じながら、最後の道のりを歩みました。この行為には、故人への敬意と感謝、そして深い哀悼の情が込められていました。肉親や地域の人々が、共に故人の最期の旅路を支えることで、故人の霊を慰め、安らかな旅立ちを祈ったのです。火葬が主流となった現代においても、式場から火葬場、そして墓地へと故人を運ぶ際に輿を使用する地域は少なくありません。近年では、台車を用いて移動させることも増えてきましたが、輿を使うことで、伝統的な葬儀の雰囲気を醸し出し、厳粛な気持ちで故人を見送ることができます。輿には、故人の最期の旅路を美しく飾り、厳かな儀式とする意味合いもあるのです。地域によっては、輿を担ぐことで故人の霊を鎮め、無事にあの世へ送り届けることができると信じられています。また、急な坂道や狭い道など、台車では移動が難しい場所でも、輿であれば人手で運ぶことができるため、状況に応じて使い分けられています。輿は、単なる運搬道具ではなく、故人の霊を運び、弔いの心を表現する重要な役割を担っています。時代とともにその形や役割は変化しつつありますが、故人を偲び、敬意を表する気持ちは今も昔も変わりません。